デジタル変革事例vol.2~大正13年の老舗設備工事業が、“スマートガテン”企業に変革~前編 導入に至る

企業概要 
社 名 中島工業株式会社 大阪市淀川区宮原
代表取締役社長 山脇 秀敬
業 種 工場プラント設備・産業用空調設備工事・給排水衛生消火設備工事・水源設備工事
    水処理設備工事・排水処理設備工事・コンサルティング(設備診断)・電気設備工事
社員数 119名

【会社概要】
中島工業株式会社(以下、当社)は、大正13年3月創業のプラントエンジニアリング(設備管理)を営む企業です。もともとは井戸工事の会社でしたが、変化を好む経営スタイルと自らをサービス業と捉える発想で事業を拡大、お客様の近くでの密着したサービス提供を行うため、現在は関西のほか、関東、東海、中四国、九州に17拠点を展開しています。
大正13年創業の老舗設備工事業が、いかに業務システム”Kintone”の最優秀事例として3,000社の中からサイバーエージェントなどの東証一部上場企業等を抑え、「kintone AWARD」初代グランプリを受賞するに至り、いまやAIエンジニアリング株式会社というIT会社を立ち上げて新サービスを展開するにまで至ったのか。
まさに“現場のアナログ情報をデジタル化して新しい価値を産み出している”事例です。
価値デザイン委員会では、デジタル変革を推進された山脇社長に直接お話を伺いました。

【デジタル変革を目指す】
山脇社長は、JR西日本、人材育成や組織開発を行うグロービスを経て、2009年に妻の父親が経営する中島工業株式会社に入社しました。
「中島工業は、生産設備の安定稼働に関するノウハウがしっかりしており、また大手企業をはじめとして素晴らしいお客様が沢山いらっしゃってしかもほぼ直取引。営業専業の社員はほぼ居ないにも関わらず安定した受注ができていて、企業基盤は極めてしっかりしていました。」

しかし一方では、勿体ないなと感じることも多かったようです。

「社内の業務はアナログでした。社内の情報ツールはほとんどがエクセルと紙で地道な作業が多く、転記作業や二重入力なども多くありました。せっかくの現場のリアルタイムな動きが把握できない状態も課題のひとつでした。デジタル化に関心のある企業での勤務経験があったので、単純に『もっと便利なものが世の中にあるのに勿体ないな』と思ったことがデジタル化に取り組もうと思ったきっかけです。」

【ツールを決める】
 では具体的に導入するにあたってはツールを選定しなければなりません。どうやってツールを決めたのでしょうか。
「SNSで見つけました。デジタル化のノウハウを持っているメンバーである普天間さんに協力をお願いしていたところ、普天間さんがSNSの知り合いの投稿で「Kintone」を知り、サイボウズに問い合わせしました。「Kintone」で実現できることできないことをしっかり見極め、最終的に当社のビジネスモデルに合うシステムと判断し、導入を決定しました。」

【不満の解消】
 デジタル変革に挑む会社がまず間違いなく躓くのが現場の巻き込みです。多くの社員にとっては慣れた業務を変えることには心理的抵抗が伴い、そこでデジタル化自体を諦めてしまうことも少なくありません。ましてや当社は業績好調の老舗企業。導入はスムーズにいったのでしょうか。

「もちろん最初は抵抗がありました。当社は良くも悪くもたたき上げの現場の職人肌の人間が多い会社です。しかもビジネス自体は好調なので、自信もある。慣れ親しんだ業務をなぜ変えないといけないのかというのが正直な印象だったと思います。当社は一人一人が自立していて率直にものを言う社風です。不満は多く出ました。」

 では、どうやって不満を解消したのでしょうか。

「いわゆるトップダウンではいけないと思いました。経営者のためであるとともに現場の人のためのデジタル変革です。しかし実際は経営者のためのデジタル化になってしまっていることが多い。ですので、業務の面倒くさいことをとにかく聞いて、それを一つ一つデジタル化で解消していきました。
 そうすると『お、なんかKintoneってやつ、意外と便利やないか』という人が少しずつ出てくる。本当はこうしたいと自分は思っていても、まずは現場の不満解消を優先する。それが大事だと思います。」

 しかし意見を言ってくれるのはまだ良い方で、現場が無関心で意見も言ってくれないという企業も多くあります。どうやって意見を吸い上げたのでしょうか。

「一つは普天間さんの存在です。自分はなんだかんだ言っても社長なので、全て本心では意見を言いにくいところもあるのかなと思いました。しかし普天間さんは聞き上手ということもあり、社員の意見を本当によく聞きだしてくれました。
 また、当初から100点のシステムを目指さないことです。10点でも20点でもいいからとにかくスピードをもって出来ることからデジタル化していこうと。駄目なら後から変えればいいんです。そうすると、初めは『ITで何ができるか分からんから意見の言いようもない』と言っていた人たちも『そうか、Kintoneてこんなことが出来るのか、そしたらこの業務、なんとかならんかな?』と意見をくれるようになる。とにかく小さな成功、スモールサクセスをいかに早く作っていくかです。」

 当社はさらにデジタル変革を進め、Kintoneは現場に定着し、ほぼ全ての業務がKintoneで行われるようにまでなります。さらにはなんと、AIエンジニアリング株式会社というIT子会社を設立するにまでなりました。後編ではその辺りについてお聞きしていきます。お楽しみに!

お問い合わせ:価値デザイン委員会
副委員長 常村 英司
080-3003-9125
kachidezaplatform@gmail.com